光子郎は怒っていて。

乱暴に口付けて。

そしてはたと止めて、俺に言った。

「わからない…そうなんですよね?僕がどうして怒ってるかわからない、って」

俺には正直に答えることしかできない。 
「うん…ごめん……」

光子郎の眼が変わる。どこがどう、なんてわからないけど、とにかく変わっていく。

そしてまた…口付け。今度は乱暴じゃなく。

「やさしく…してほしいですか?」

耳元で囁く甘い声…その辺から俺はおかしくなる。

組み敷かれた感触を背中で察する。叫び声もあげられない。何?わからない…。

光子郎が何か言ってる…でももう吐息しか聞こえない。出せない。わからない。

ごめん…何言ってるか聞きたいのに。お前が言ってること、全部もらさず聞きたいのに。頭が言うことを聞かなくて…涙まで出てくる。

「好きです、」 …それだけは はっきり聞き取れた。

瞬間、あの感じが体を這い上がる。

吐息が切れて、身が固くなる。…でも、光子郎は言う。

「いつもとは違うんですよ、太一さん…なんで … 僕が一人で空回りしているんでしょうか…?」

コトバは聞き取れてもさ、光子郎…イミがわかんねぇよ…アタマがとけそうで…

ただただ浅い呼吸の俺を気遣ってくれているらしく、光子郎は身を離す。
けど、「気遣って」たわけではなくて、…

 

 

「光子郎?おま…」
「太一さん、気持ちよかったですか?…さっきのは、マニュアルセックス…今度は…」

つい今一度放ったそこを口にふくまれて。
舌と歯の“愛撫”を感じてまた妙な吐息をもらす…

「……ふッ‥‥」
「今度は、オーラルセックス‥…」

話されると…その口腔の動きが甘い刺激に一変する。

ところが、突然その行為は止められる。
…止められることがこんなに辛いのは初めて…いや、今まで止められたことなんて…

「太一さん、どうして僕が怒ってるか教えましょう。」
「ほんの些細なことなんです。自分でも嫌になるような。」
「でも…それが太一さんの気持ちなのかなぁ、って思ったら…すごくやるせなくなって…」

「こうしろぉ‥…俺…が‥‥悪かった…から‥‥」

「太一さん、僕のこと…ほんとはどう思ってるんです?」

「…おねが…い……はや く…つづ け て…」
自分の声じゃないみたいな、変にまとわりつく声。…こんな声でも、こう言うのが精一杯だった。

「太一さん…聞かせてください。」
「光子 郎…好き、…すごく…‥‥だか  」

いい終わらないうちに、光子郎は先程の続きをしてくれる。

でも 果たすことはさせてくれなかった。

「今なら大丈夫そうですか?」
「‥え?」
「今の太一さん、すごくかわいいんです…だから 今なら って…だめですか?」

頭は相変わらずくらくらしてるけど、一回目のときほどじゃなかった。
何?何が「大丈夫」なんだ??
けどもう、限界が近かったし、何より、もう退けないような気がしていた。…あの眼の光子郎からは、逃げられない、って。

「光子郎が…そう言うんなら…‥俺‥」

にっこりと、光子郎が笑う。でもあの瞳は健在。なかなか怖い。

と、…思わぬところに痛みを感じる。
「?!……つッ」
「あ…痛いですか…?」

浮いてるような感じでふわふわしてたのが、急になくなって、その痛みをじかに感じるようになる…

「すぐによくなりますよ、だから…ね?」
のんきな声に多少の怒りを覚えて、必死に光子郎の顔を見据えると、そこには、笑顔。
でも、さっきまでの怖い眼はいつの間にかなくなっている。
…すごくやさしい、いつもの光子郎の笑顔…
少し安心する。光子郎に全てを預けようって気になる。

でもこの痛み…

「太一さん、嬉しいです…初めてなんですよね…」
…?…何がだよ??お前とはよくこうゆうコトやってるだろ?そりゃ…口にくわえられたり(…自分で考えてて恥ずかしくなる)指をそんなとこに入れられたのは初めてだけど。…とにかく、光子郎が喜んでくれるなら、何でも いい。

そう思ったとたん。
快感。
息が出来ない。さっきからの痛みがひいていくのに、息ができない…
高まって…

「……!っ」
自分が信じられない。
痛かったのが、光子郎の言ったとおりになって…

「太一さん、続き、いいですか?」

は?

「エイナルセックスのことですよ」
…えいなる??

「…ま、今日はいいです…僕は充分楽しかったですし、太一さんもそうだったでしょう? それに、…まだ早いですよね」

まだ呼吸の落ち着かない俺に優しい キス。

 

「太一さん、僕が怒ってた理由、お教えしますね。」

…なんでこんなイイときに言うんだよ……けど、怒らせたのは俺だろうから、ちゃんと聞かなきゃ。

「先ほども言いましたけど、自分でも嫌になるようなことなんですが…」
「先週も、今週も…一度もお会いできませんでしたよね…?ひょっとして、僕のこと避けてます?」

「ち、違うって!!」
即座に否定して“しまった”と思う。

でも。 光子郎はいつもの笑みをたたえていた。

その笑顔に甘えて、俺は考える。……正直に答えなきゃ、と。
「朝は…朝練があるだろ、朝練が無いときは光子郎なんかよりずっと遅く、遅刻寸前に行くし…」
「昼はクラスの奴らに捕まっちまって…運動場だし…」
「お前が帰る頃はクラブ…だろ、……だから…」
「あっほら、今まで会えてたのは、俺がお前のとこになんか借りに行くときくらいのもんじゃん!!」

…我ながら…思いっきり言い訳である。

「よかった‥」
「え」
「太一さんに避けられてると思ってました。変なことしちゃったし。あ、…今日も‥‥‥ひどいことしちゃって‥すいません…」

光子郎がどれだけ俺に入れ込んでるか、垣間見た感じがした。
ちょっと優越感に浸る。
だから、“気持ちよかった”なんて言わない。
怖かったんだし、これくらいは許してほしい。

思考がそこまで進んだとき、俺が答えないのを気に病んだのか、
光子郎はまた腕を延ばし、キス‥‥‥

 

‥‥

 

ところで、えいなるって…何なんだ??
…?!!せ…!!??

 

 

アトガキ

光子郎さんはちゃんと第2ラウンドですっきりしちゃってますんですよ。。

これは99ゲッター雅志様へのささげものでした。

あああすいません。

みゆまいら 2000.06