それは自覚したことから始まって。

かれを欲している自分を発露させたとき。かれと共にただ過ごしているだけでは、満たされないと悟ったとき。

 

・・光子郎が触れてきた、・・・その指は、微かに、震えていた。

・・・震えたいのは俺の方だ。

けど、かれの瞳はあくまでも優しく、・・でも、激情を秘めて、・・・・

舌と。唇と。なめらかな肌。

その全てが、なにも考えられなくなるほどに、卑猥な感覚をこの体にもたらす。

何も考えず、それに身任せればいい。

そんな声が、どこかから聞える・・。

けれどいつのまにか、それすらも感覚の波に押されて、・・・・・・俺は、自我を失って、それでもまだなお、かれの腕を求め続ける。

 

「たいちさん」

その声が。遠い。すぐ近くのはずなのに。

だから必死に。必死に、・・・かれを呼ぶ。かれを求める。かれを捉えようとする・・・。

「光子郎っ・・」

切ない。出る声はまるで自分の声ではないような高い声・・。それでも、いや、それだからこそ、

「光子郎・・こうしろう・・っ・・・」

何度も。――― 呼んで。呼んで。呼んで、それでも、まだ、・・・

 

かれを、俺のものにしたわけじゃ、ない。

 

ああ。俺は、かれを求めていたはずなのに。

いつのまにか、かれのものになり、同じように、かれを自分のものにしたいと願っている。

「光子郎」

「・・・はい。」

その声を。その笑顔を。全て。俺のためだけに・・・・・。

 

なにも考えられなくなった瞬間があった。

それは刹那的な殺意に似て、つと去ったあとに残った「欲望を満たした感触」がこわい。

かれの頬に、手をのばして。

ずっとずっと触れたかったその肌を、蹂躪する・・・。

絶えることの無い自分への蔑、そして…満願叶ったり、の感。

 

あなたはどうして。

僕をこんなにめちゃくちゃにしてくれるんですか。

まるで全てを悟っているかのように微笑んで。

僕の笑みを。僕の言葉を。・・・そう、あなただけに向けられた僕の行動を。

あからさまに独り占めして・・・。

あなたは、それが・・・僕への義務だとでも、思ってるんですか・・・・?

 

「光子郎・・・」

「・・!・・たいちさんっ・・・・」

太一さん。

きっと、

僕は、あなたを壊したいんだ。

・・・そう思ってしまうほどに、かれをいためつけた。

かれを・・・かれを、この腕で抱いて、・・・・抱いて。・・・怖かった。

 

「こうしろう?」

「・・・はい・・」

怖い。自分が、かれが、どうなってしまうのかわからなくて。

かれを、いつか壊してしまいそうで。

 

「太一さんは、・・・・・」

僕のこと、好きだって言ってくれましたよね。

あなたを全力で守ります、と。そう誓っているのに。

それなのに・・。

 

「たいち、さん・・・」

かれの名を呼ぶことで押さえつける。この不安を。

・・・いや、この不安の名前は・・・

 

 

 

悩んでるけど、かなり良い雰囲気。それが好きなんです(迷惑な)
設定は・・・閨での思索、ってコトですので(爆死)、本人サン達が意識朦朧としてるので(笑)許してください(違)