「言葉だけじゃ、足りませんか?」


そう言って彼が延ばした腕、
俺はその腕に何度抱きとめられたのだろう。


「足りない・・・・。」


熱に浮かされたように、
その腕に擦り寄って、・・・自分でもおかしいと、そう思う。


「そうですか、でもね、僕はまだ、」


そんな言葉聞きたくない。


「やだ・・・お前らしくない」


俺を見つめる瞳、何かを紡ぎだそうとする唇、そのどれも、俺のものだ。


「何ですかそれ・・まるで僕がいつもいつもあなたのこと狙ってるみたいに言って」


そんな風には思ってないよ。


「だってそうじゃん」


── そんな風には思ってない。


「・・・そんなこと言ううちは駄目です」


愛おしそうに顔を包んでくれていた手が離れ、そして視線が俺から外されても。
お前は俺のこと、全神経で感じてくれてる。


「なぁ」


すっと立ち上がって、褥から出たお前は、綺麗な立ち姿で蔑むような視線を落とす。


「太一さん、・・・・」


苦しそうに表情を歪ませて。
ああ、苦しまないで。
お前のその表情は、俺を甘く酔わせるから。


「ごめんごめん、悪ふざけは終わりにするからさぁ」


「・・・・・・。」


嘘でしょう、信じませんからね、そうお前の瞳が語りかけてくる。


「けどさぁ、誰だってこういう時ってあるもんじゃねぇの?」


下から上へ。その方向を妙に意識してしまう。
上目遣いが、お前は嫌い。媚びてるみたいだ、っていつか言っていた。


「あなたは・・・あなたは、いつからそんな人に・・」
「だから、今みたいのは特殊だって
――


貪るように、口づけ・・・。


そしてお前は固く俺を抱いて言う、


「あなたは僕の大事な人です、いつまで経っても、変わらない。だから、だから今みたいなのは・・・どうか僕だけにしてください」


嬉しくて。ただ嬉しくて泪が伝った、
俺はお前の「大事な人」、お前は俺の大切な大切な存在、
いつまで経っても、変わらない。





 

銀の林檎のなお様に差し上げた…
いえむしろ。
押し付けた、と言った方が…;;そんなシロモノです;
一応大人ってことで(爆)。
結婚後…かな。(爆爆)


みゆ まいら 2001.06.05.