しいて言うなら、……「どっかーん」って感じか。
三度目の正直…ではなくて、二度あることは三度ある式に、やってはならないことをやってしまって。
光子郎の怒りは頂点…でもないんだけど、まぁかなり上の方まで行ってしまったわけだ。

「僕が…僕がいない間、ずっと家で大人しくしててくださいなんて言いませんよ、」
「ハイ…」
「家事をしろとも言いません。」
「……」
「お酒を飲むなとも……たまに言いますが─それは全部こういうことがあったからなんですよ?」
「…うん。」
「太一さん」
「…ハイ…」
「こともあろうに…、子どもに冷酒飲ませるなんて…」
「………ハイ…ごめんなさい………」

光子郎が怒る正当な理由は十分にありすぎた。
俺だってもちろん悪いことしたって思ってます。
ほんと入院沙汰なんかになってたら俺は「どうしようもなく救いようのない酔っ払い」というレッテルを貼られるところだったんだから。
むしろ…今でもそうなんだけれど…。
光子郎が怒り続ける理由はまだある。
ヤマトだ。

「僕にとっても空さんは大切な人です…親しいからという理由だけでは…」
くどくど言い続けるその口から、ヤマトの名前は出てこない。
被害にあったのはあくまでも「空さんのお子さん」であって「ヤマトさんところのお嬢ちゃん」ではないみたいだ。
ばかばか光子郎。
本当は俺がまた他所で酔っ払ったことよりヤマトと飲もうとしたことを怒ってるんだ。

「ごめんって……なぁ」
「…反省してるんですか…?」
にべもないお言葉で。
「反省?これ以上無いってくらいしてるさ」
「…後悔と反省とは違いますよ」
「後悔もしてるけどさ…」
「じゃあお酒は控えてもらえますね?」
「…〜〜〜。うー…。」
「せめて…」
光子郎は言葉を切った。
言いかけたことを後悔してるんだろうな。
「せめて?」
「………わかってるんでしょう」
少し赤くなったその顔は、厳しいままの眼と、ふてくされたような表情。
「うん」
拗ねんなよ。可愛い。…ってそんなこと考えてるヒマがあったら…
「さて、と…あの親バカんとこに行かないとなぁ」
「え…?」
「ヤマトはいなかったの。あいつすんげえ忙しいくせに、子どもに何かあったら結構すぐ家に帰ってきちゃうだろ。多分今頃家で俺を殺すってわめいてるな」
「今日は僕が帰ってきてるのに」
少し笑って、光子郎はもう一度厳しい顔に戻った。
「空さんのお宅にはしばらく出入り禁止ですね!」
ぴしゃ。

…何、今回は…
酒は家で飲めって言われただけ?
…夜はたぶんヤマトの家で明かすだろうから……
ひょっとしてお仕置きは無し?…はは。

……甘いかー…。




4/28に無料配布したものです。
結構気に入ってはいますが、なんせ荒削りですいません。
太一さんぽくやってみれたのは良いけど、しっくりこないような気もする…。
みゆまいら 20020505