02ビギニングみました【微ネタバレ】 10/28/2023
さむい夜は落ち着く体温と落ち着く香りに包まれたいもの。太一はその夜、まさに求めるものにくるまれていた。しかし、気分は上がらない。 「気にしすぎですって」 光子郎があえて太一の顔を見ずにやさしく言ってくれるのだが、気分は鬱々としたままだ。自分を責める気持ちばかりが湧いてきていやになる。 「気にするだろ」 「あのときは余裕が無かったでしょう?」 「そんなの言い訳にしたくねえ」 「ヒカリさんは分かってくれてますよ」 「でもタケルには言ったんだ。俺が電話で怒ったって」 「んもう…何回言ってるんです。堂々巡りですよ」 太一を傷つけない程度に笑いを含ませて放たれた言葉に、いいかげん呆れのようなニュアンスがあるのを太一は感じ取る。光子郎にも嫌われるのかなあ、などと思ってしまうのは気持ちが沈んでいるからだ。 「タケルくんに言ったのは、それだけ太一さんが必要とされていたっていう説明もあったんじゃないですか」 「ないない」 「あんなに急に、太一さんが有名になるとは思いませんでしたもんね」 「……そっか」 何気なく光子郎が言った言葉が太一を納得に導く。 渦中にあって、既に学生社長として有名になっていた光子郎との経験の差を痛感したのだ。準備ひとつとっても気を抜けない、発言には本当に気をつけないといけない。そんなことは初めてだった。人生経験は無くともデジモンには詳しく、太一は必要とされたのだ。ほんのすこし前まで学生だったんだぞと言えるような立場では無かった。 「すごかったですよ、太一さん」 今度は光子郎が太一の顔を見ている。穴があくほど見つめられているのが分かる。 「惚れ直したなあ」 さっきの鬱々とした気分はどこへやら。太一は急激に熱を感じた。もう、さむくない。 「俺も」 太一は布団をかぶってから初めて、光子郎の顔を見た。 「光子郎のこと、惚れ直したよ」 「そうですか? 嬉しいです」 やっと落ち着いたというときに、心の平安も取り戻した。ゆっくりやさしく唇を重ねて、長い夜が始まる。
pixiv更新 6/26/2022
昨年発行の光太アンソロジーに寄稿した長いラスエボ軸の文章をpixivに載せました。 自分のサイトに載せてもいいんでしょうけど、こう、ちょっとでもね、数字があると嬉しいものなんですよ。。 よかったら見てやってください。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17850834
はちいち 8/1/2021
光子郎は画面を見ながらアルミ缶の飲み物に口をつける。いつも行くスーパーでちょっとお酒を買おうと思って売り場に寄ったものの、普段買わないからその種類の多さに圧倒された。なんだか惹かれるものがあって花火がデザインされたパイナップルのアルコール飲料を購入した、悪くない。酒というよりジュースみたいだが。
画面の向こうは米国、シンポジウムでオブザーバーを務める顔を見つめる。真剣な顔、あるいは笑顔とともに放たれるウィットに富んだコメント。光子郎には何を言っているのか細かい機微の分からない言葉もあった。そういうときはその発言の時刻となんとなく聞こえた感じを記録しておいて太一に教えを乞う。光子郎には知識が増えるし、太一には伝わらない人間がそれなりにいる表現だと認識させることになるからwin-winなのだ。
この数時間前にやりとりした言葉を思い出す。 <ごめんな 今日8月1日なのに> <いいんです 今年なんてどうせ集まれませんし> <集まれなくてもさあ> <いや> <ごめん 俺は光子郎といたいよ> はっとする言葉が書かれていて、光子郎のほうがむしろびっくりしてしまった。離れていようが問題なく自分たちは順調だと、そう思い込んでしまっている。その視野狭窄は、危ない。 <そうですよね> <僕もです タイミングを見て会いに行きます> <正規ルート?> <裏> <です> 光子郎だって、たまには悪事に手を染める。 <僕だってあなたといたい> その言葉が太一を喜ばせていると信じて。 <シンポジウム、見ますね> <まー適当にやる> <がんばって> 返ってきたスタンプがアグモンの「だいじょうぶ!」であることに笑んでから、光子郎は仕事をいったん終わらせてスーパーに行き食事とアルコールを買った。それはある意味、普段の自分からちょっとばかり脱却するということ。
あとどれくらいで彼をこの腕に抱き込めるかと想像しそうになったがそれを押しとどめて議論に意識を持っていく。どうやって執行するかはもう考えてある。つとめて冷静に。しかしそれと矛盾するアルコールを、もう摂取してしまっている。冒険にわくわくする。8月1日は、これでいいのだ。
光太アンソロジー 参加してます 2/14/2021
BOOTHにて光太アンソロジー「ぼくとあなたの×××」販売開始されています。 https://booth.pm/ja/items/2697169 参加させていただきました。冒頭の1ページがサンプルになっていますのでご確認いただければと思います。 なーんかダラダラと字数だけ多くなってしまったのですけど。それなりに気に入っとります^^ よろしくお願いします。
pixivに2012年冬コミ光太コピー本アップしました 1/16/2021
さいごに出したコピー本、大人おもちゃ光太本「Why not use the toy ?」をpixivにアップしました。 当時お買い上げくださった皆様本当にありがとうございました。 もう8年も経ったんですって…ひええ
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14475719
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