光太(時間軸よくわからないよ!) 1/1/2021
はあ、はあと息を切らす中に、ふう、ふううと夜の息が混じる。 (いま、何時……) 年越し蕎麦を食べた。鍋と丼を洗い、テレビをすこし見て。日付が変わるよりずいぶん前にリビングのあかりを消して寝室に入った。太一が先にベッドに腰掛けて、光子郎が追うようにキスしてくれて。押し倒されるより早く、光子郎を引っ張って二人で倒れ込んで笑い合って。こんなふうに年越しをするのは初めてじゃない。かといって、毎年できるわけじゃない。だから貴重だ。 (もう日付かわったのかな) 快感の中で太一がほんのすこし時計のほうに視線を移したのを、光子郎は気付いただろうか。 「っ、あ、」 もう二度ほど達したあとだ。光子郎が太一の中に埋めた自身をゆっくり引き、ゆるゆると埋める。緩慢な動き。太一を追い詰めはせず、いっそもっと強くしてと願ってしまう優しさで快感を引きずり出す。そんな光子郎を邪魔することなく、太一は言葉を告げた。 「なあ、とし、あけた?」 「さあ…、」 光子郎にとっては年が明けたかより、太一が気持ちいいかのほうが重要だ。けれど、年越しが気になる太一のこともおざなりにはできない。 「時計、みえる?」 「僕はあなたを見ていたい」 こう言われてしまっては、太一は時刻を知ることをあきらめるほかない。 「うん…」 胸をきゅううとさせてただそれだけを答えるが。光子郎は自身を何度か動かしたあと、太一にキスを落とし時計を見てくれる。 「ああ、日付かわりました、20分ほど過ぎてます」 「え! じゃあ、ッ、あけおめじゃん」 「ええ」 「っ、はあっ、はは、めちゃめちゃ、最中だなっ」 「ええ、…しあわせです」 「うん、…来年も、こうしたいな」 「心得ました」 嬉しさの中にいたずらっ子のような表情がある。そんな顔をさせていることが、たまらなく幸せだ。
光太 11/22/2020
なにをしていたんだっけ、ぼうっとしながら太一は自分の状態を把握しにかかる。そうだ、寝て起きたのだ、このシーツはついこのあいだ新しいものに変えたばかりで張りがある。しっかり体温に馴染み心地好い。くん、と匂いを嗅いで思い出した。光子郎に愛されたのだということを。 (あー、そうか、そんでまあだらしなく寝てたわけだな) 枕を掴んで顔を沈める。服を着た覚えは無いが肌にはパジャマが纏わされていた。こういうときのために買った安物だ、おそらく光子郎はあらかじめクローゼットから出しておいて太一が深く眠るうちに起こさないようそっと羽織らせてくれたのだ。 (……愛されてる) 頬が赤くなるのを感じる。光子郎に愛されているなんて当たり前なのだが、あらためて感じるとそりゃあ照れるし幸せだしうわーっとなる。だがしかし。無意識に寝返りを打とうとして身体の重さを感じると、光子郎への愛はガッツリ削られる。 (すきほーだいやりやがった…だから寝かされてんだわ) いや、光子郎が本当に"好き放題"したわけではない。分かっている。太一だって盛り上がった。「もっと」と求めた太一に光子郎が掛けた「無理しないで」という声音を思い出して太一はもう一度うわーっとなった。どうせなら記憶が無くなっていたら良かったのに。 「……」 分かっている。これが幸せだと。喉が渇いていた。太一は光子郎を呼ぶことに決める。たぶん光子郎は、ものすごくにこにこして幸せそうな顔をしているだろう。それでいい。それでこその、幸せだ。
光太アンソロジーに参加させていただきました 10/18/2020
出るんですよ、光太アンソロジーが! R18、テーマは調教ということで結構長い文章で書かせていただきました。ただし調教はできてません(できてへんのかーい)。
このご時世ということでイベント合わせではなく通販主体のようです。 ご興味ありましたら!よろしくお願いいたします!
https://twitter.com/yksn9927/status/1317814111154044929?s=21
光太 8/9/2020
どれだけ忙しくても顔をあわせようとか、なにがしかの痕跡を残しておこうとか、そんな約束をしたことは無い。無いけれど、こうなる。 「昨日けっこー遅い時間までやってたんだろ? 今日は早く寝ろよ」 「はあ、でも昼寝しちゃいましたし、データが気になってあんまり寝る気にならなくって」 「お前そりゃ睡眠足りてねーから昼寝なんてしちゃったんだろ。あと、データはお前が見てなくたってモニタリングしてんじゃん」 「ええ、その通り……いやもう、ほんとその通りなんですけど」 画面の向こうで光子郎は苦笑いしている。時差のある会話だ。光子郎のいる場所は夜。太一のいる場所は午前。車で移動するときはミーティングがあったり資料を読み込んだり、そういうことをすることが多いが、時間は太一が自身である程度コントロールできる。5分程度ならむしろ太一の精神衛生上こうしたかった。つまり、光子郎に俺はお前のことを気に掛けている、忘れていないと伝えることは重要だ。 「まあね、頭では分かってても、ってことはあるもんだ」 太一が理解を示してやると光子郎はばつの悪そうな表情を緩める。許してもらえたと思ったのだろう。 「すみません…、あの、でも、太一さんに言われて気持ちが切り替わりました。今夜はもう寝ます」 「おう、そうしろそうしろ。無理するなって」 「太一さんも。無理しないで」 「まーこっちはまだ昼前だから。でもありがと。おやすみ」 「やだなあ、さすがにもうちょっと起きてますよ」 「はよ寝ろ」 笑って通話を終えた。光子郎に影響を与えられることにほっとする。すこし自信を回復して、太一は表情を引き締め頭を仕事モードに切り替えた。 「よし!」
(太一さん…、仕事がうまくいってないのかなあ) 光子郎にとって、仕事中の太一から連絡が来るというのは嬉しいような嬉しくないような、どちらとも言いがたい出来事である。 (近くに、いたいな) 自分のできることをするしかない、そう自分に言い聞かせて、光子郎は太一にメッセージを入れる。 〈さっきはありがとうございました。あのあと寝る準備ちゃんとしました。おやすみなさい〉 がんばれ、とは書かない。太一はきっと自力で活路を開くだろうから。帰ってきたときに労をねぎらってあげられれば良い。 (大好きです、太一さん)
光太(ラスエボ軸) 6/15/2020
光子郎と会う。それは特別なような、日常のような。 正門を出て、メトロに揺られ。 駅で光子郎と落ち合い、またメトロに乗る。 次の乗り換えまで10分強。他愛のない会話をすることもあるのだが、今日は。 「!」 太一は急にのしかかった重みに最初驚き、そしてすぐに唇を歪ませる。微笑みたいのを我慢したのだ。 (お疲れなんだなあ、光子郎) 授業が早く終わる曜日はバイトを入れるが、今日は光子郎が会いたいというので変わってもらった。光子郎が忙しい身なのは分かっている。今だって、光子郎のオフィスに向かうべく海のほうへと向かっているのだ。 (俺の肩でよけりゃあいくらでも) 歪ませていた唇をすこしきりっとさせ。 (でもせっかくだから、膝枕してやりてーなー) 眠りを妨げないようそうっと光子郎のももに手を置いて、しれっとなにごともないような顔をし太一は数駅を幸せに過ごしたのだった。
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